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大きな片流れの資材小屋

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大きな片流れの資材小屋

私たちで廃校利活用の全体構想を進めている『Ayala Kyono Village』の一画に建つ資材小屋のプロジェクトです。

『Ayala Kyono Village』は、ロボットの設計から、加工、組み立てまでを一貫して行う地元の有力企業が、廃校を買取り、ロボットの組み立て工場新設に併せて、地域の学び舎として再編するプロジェクトです。詳しくはこちら(【project】Ayala Kyono village 全体構想のリンクを貼る)をご覧ください

『Ayala Kyono Village』は、多額の投資をして廃校を一新するわけではなく、地域住民の歩幅に合わせてし少しずつ手を加えていく方針を掲げました。そこで、まずは資材を貯蔵、加工できるものづくりの拠点として資材小屋の建設を提案しました。地域住民を巻き込んだ、ものづくりの仕組みをつくることで、今もなお愛され続けている校舎の記憶を引き継ぎつつ、新しい姿へと共に育てていくきっかけになると考えています。

資材小屋という「もの」が主体となるプログラムでは、大胆でかつ大雑把な空間が相応しいのではないかと思いました。そこで、校舎の背後に凛としてある平群山(へぐり山)の流れを引き受ける大きな片流れの形状を採用し、そのほとんどが半外部空間の建築としました。必要最低限のセキュリティーゾーンがあるくらいで、それ以外はもはや私たちを突き放すような伽藍堂空間です。

大きな片流れはいくつかの効果を期待しています。
一つは、背後にある山との密接な関係性を視覚化することです。この資材小屋は、地元の材木屋と工務店の手で、全て地元の木材と伝統技術で建設します。材木の歩留まりから各部材寸法を決定し、それでも余った材は買取り資材小屋にストックしていきます。このように、資材小屋建設や、その後の運営を通して分かった、普段は見えない林業や建設業、場所とのネットワークを片流れによって可視化し、ものづくりの背後に眠るダイナミックな人と環境、産業とのつながりを発信し、ものづくり文化を拡大していきます。

次に、大地との身体的な関係性を獲得することです。片流れの屋根は、そのまま遊具のような立体構築物となって地面にまで下がっていきます。明確な機能は設定しておらず、併設するBBQスペースの休憩所や、子どもたちの遊び道具、ギャラリー壁など、資材小屋で行われる様々なものづくりの使い方に寄り添います。

最後に、様々な高さが生まれることです。最大高さは6mで長い木材の貯蔵や、大きな彫刻制作などができます。一方で最小高さは2mほどで、子供達が籠る秘密基地のような場所になります。高さの変化は、いろいろな使い方を想起し、それらが一体的な空間に同居する関係性を生み出します。

この資材小屋では、「もの」が主体となるように「ものと建築」「山の風景と建築」の関係性を作ることに徹底し、人の居場所を宙吊りにすることで、むしろものづくりをしていくうちに、新しい居場所を発見し続けられる建築を考えました。

入学してから6年かけて思い出を蓄積し、成長する小学生のように、もしくは小学校の出来事を糧に社会で成長する大人のように、時間をかけて少しずつ、人や地域と共に成長する学び舎になることを期待しています。

LOCATION 栃木県
DATE 2024
STATUS 進行中
TYPOLOGY 資材小屋

PERSON 武部大夢,長岡稜太
PHOTO nata studio

nata studio

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