恵の溜まり場と地域をつなぐ学びの拠点
「学び」を通して町の恵みと地域をつなぐ
栃木県、埼玉県、群馬県、茨城県の4県にまたがるようにある渡良瀬遊水池を活用し、その周辺地域の暮らしとつなげるまちづくりのプロジェクトです。渡良瀬遊水地は、平野部の窪地という地形的な特徴を持ち、山から流れ出る川の水と一緒に、養分や多様な生き物といった「恵み」が溜まってきた場所です。その恵みを求め人が集まって村ができ、恵みを最大限に生かしたヨシズ産業や漁業、農業のような生の営みが行われてきました。
近代以降、遊水池として整備され、さらに駅を中心に町が発展したことによって、恵みは暮らしの裏側になっていきました。一方、それでもなお、ここにはヨシ原が広がり、魚や虫が棲みつき、鳥が舞い降りる美しい環境が残っており、自然を体感し、生きる喜びを発見できる「恵みの溜まり場」であり続けていると思います。
わたしたちは、「学び」をプロジェクトの中心に据え、恵みの溜まり場と地域をつなぐことを考えました。学びを通して、もう一度遊水池が町の延長となるような地域づくりをすることで、恵みが持つ雄大な自然風景や、多様な生き物から日常的に学び、地域を愛し、そこで暮らすことの喜びを発見することができる地域を目指しています。また、恵みが町を興したように、恵みと地域をつなぐことで、地域の外からもたくさんの来訪者や移住者がくると考えています。学校のプログラムや空き家改修などと連携を図りながら、外からやってくる人の受け皿にもなるような場づくりを目指しています。
具体的には、恵みの溜まり場と地域をつなぐための『学びの拠点』の整備と、並行して移住者や訪問者の受け皿となるような空き家利活用の不動産事業を進めています。学びの拠点では、実際に手で触れ、感じ、成長できる自然体験の活動を支え、市民活動団体や小学校などの学びのプログラムの拠点になるだけでなく、放課後の遊び場のように、市民の日常的な居場所になると考えています。また、遊水池は 400ha と広大な敷地なため、複数の市町によって所有、管理されています。遊水地に対する思いや管理の仕方はそれぞれの市町によって異なるため、それぞれの市町の個性を活かした学びの拠点の整備を進めています。
空き家の利活用事業は、計画段階から地域の座談会に参加し、情報収集や意見交換を行いながら進めています。空き家利活用が、個別対応的にならずに、市の役員と地域の方と連携しながら、様々な人を迎え入れる新しい町の未来に向けた全体方針を考えています。
LOCATION 渡良瀬遊水地とその周辺地域
DATE 2023~
STATUS 進行中
TYPOLOGY まちづくり
PERSON 武部大夢,長岡稜太
PHOTO nata studio